今回は補綴カウンセリングについて考えていきたいと思います。
早速ですがここで質問です・・・
「補綴カウンセリングを実施している歯科医院はどの程度あるのでしょうか?」
私は仕事柄、多くの院長先生からお話しを伺うことが多いのですが肌感覚で補綴カウンセリングを実施している歯科医院は5~6割程度です。
それもある程度自費率の高い、もしくは自費率を増やしたいと考えている歯科医院に訪問しての話しなので歯科業界全体からしたら2~3割にも満たないのが現状といえるでしょう。
目次
そもそも、補綴カウンセリングが必要か!?
いろいろな考えがあるのでなんとも言えませんが、結論的には自費率を上げようと思ったら「補綴カウンセリング」は必要です。
稀に患者さんから「白いセラミックの歯にしたい」という要望があるかもしれませんがそれは本当に稀です。
補綴カウンセリングの目的
- 患者さんへの治療方法(方針)の説明
- 最善の医療の提供
- 自費率向上
- 保険治療によるリスクの説明(訴訟リスク軽減)
主な目的とすればこんなところでしょうか・・・
一番大切なのは患者さんの身体(口腔内)のことなのでどのような治療をするのかしっかりと伝えるということです。
患者さんへの治療方法(方針)の説明 ・最善の医療の提供
- 今現在、患者さんの口の中でどのようなことが起こっているか
- これまでどのような治療を行ってきたか
- 今後どのような治療方法があり、どのような治療をしていくか
- 患者さんの望む治療は?またそれにどの程度医療費がかかるか
これらのことを伝えて、相談し、決定していくのが補綴カウンセリングです。
前提となるのは患者さんに対して「最善の医療の提供」を行うこと。現在の日本においての歯科の保険治療とは「噛む機能の 最低限の回復」が前提となっており「最高」の治療を行おうとすると自費治療となるため、多額の医療費がかかることになります。患者さんにとって「最善の治療」とは患者さんの症状や経済状況も踏まえた上で、今の患者さんにとって最善な治療を一緒に考えていくことです。
自費率の向上
また一方、歯科経営においても自費治療を増やしていくというのは経営的な課題として付きまとうものです。経営状態が安定しなければ患者さんにも「最善の医療の提供」ができませんし歯科医院の成長もありえません。
そこで自費率を増やすためには「補綴カウンセリング」は必要で、何も知らない患者さんに対してカウンセリング(情報提供)を行わなければ治療の選択肢すら提示できず、患者さんが望まない保険治療をおこなうことになりかねません。
これは患者さんの考えを無視することとなるうえ、自費診療に繋がるチャンスすら自ら潰しています。
保険治療によるリスクの説明
保険治療に限らず、治療によるリスクは顕在的にも潜在的にもあります。自費治療を行う場合は説明を行ったうえで治療をおこなうので説明をする機会がありますが、カウンセリングをせず保険治療をおこなった場合、リスクなどの説明をしないケースが多くなります。
一番わかりやすいのが、『メタル』を使った治療においてのリスク説明です。 メタルを使う治療では患者さんへ確認やリスクを説明する必要があります。
- 金属アレルギーの有無
- 今後の金属アレルギーのリスク
- メタルタトゥ、ブラックマージンによる見た目の変化
- 笑った際の銀歯の見え方
これらは治療前に必ずやらなければ患者さんとのトラブルになりかねません。実際に「金属アレルギー」の患者さんに金属を使った治療を行ったため訴訟になった例は連年増加傾向にあると言われています。
患者さんは説明を求めている
以前、インターネット調査を行った際にも9割の患者さんが「保険と自費の治療について説明を受けたい」という調査結果が出ました。
よく耳にするのが、「自費の話=お金儲け」という感覚から「自費」の話はあまりしたくないという先生がたくさんいらっしゃいますが、患者さんの本音は「自費を含めた説明」を求めています。あくまでも押し売りな感じにはならないように患者とコミュニケーションを取ることが大切です。
調査概要
サンプル:銀歯を保有する20代~60代の女性 100名
調査期間:2016年7月22日~24日
調査方法:インターネット調査
自費を上げるための補綴カウンセリングのタイミング
ここまではカウンセリングの重要性についてお伝えしてきました。それでは自費率を向上させるためにはどのよな事をすればいいのでしょう。
多くの歯科がおこなっているカウンセリングのタイミングとその内容
いろいろな先生方の話しを聞いたり、アンケートをとった結果、多かったカウンセリングの流れは・・・
【新患】主訴への対応
↓
口腔内診断・初診カウンセリング
↓
治療(根治)
↓
根充・補綴カウンセリング
↓
メンテナンスへ
大まかな流れでいくとこのような歯科が多かったです。
多くの歯科でやりがちな失敗例とNGワード
被せものの種類ですが、
”ハイブリット”が 5万円
”セラミック”が8万円
“ジルコニア”が10万円です。
”CADCAM冠”なら保険が使えます。次回までに考えておいてくださいね!
これは極端な例かもしれませんが・・・「根充後」にいきなり患者さん金額のことを伝えていませんか?
- 被せ物のメニュー(種類)
- メリット・デメリット
- 金額
これらのことを伝えることは決して悪いことではないのですが、今まで何もして(話して)こなかった患者さんに対し突然このタイミングで金額を・・・
しかも自費となるので金額提示は高額になり、患者さんはビックリして拒絶してしまいます。
↓
(患者さん)驚く、高額な治療に拒絶
↓
(歯科)患者さんの拒絶を感じる
↓
(歯科)金額(自費)の話をしにくくなる<モチベーション低下>
↓
(歯科)何も聞かずに保険診療で進める
↓
(歯科)自費が上がらない
このような状況に心当たりの多い先生方やスタッフの方は多いと思います。
では、どうですればいいのか?
本来はスタッフ全員がカウンセリングができて「初診カウンセリング」から「補綴カウンセリング」など要所要所で患者さんに口腔内で何が起こっているか、歯科素材ごとの長所短所をお伝えしていけばいいのですが、
- カウンセリングできるスタッフがいない
- カウンセリングをする時間がない
このような歯科医院はとても多いと思います。それでも患者さんに情報を提供していかなければ状況を打破できないのでまずは簡単に始められることからやっていくといいでしょう。
- 歯科素材や歯の寿命についてのチラシを置く(渡す)
- 歯科素材や歯の寿命についてポスター(張り紙)を貼る
- 歯科素材や歯の寿命についての動画を流す
このくらいでしたらどうでしょう?
歯科の考え方にあった「モノ(資料や動画)」を入手したり、制作したりするのは少々手間が掛かりますが、一度作ってしまえばあとは貼る(設置)して、それを「見ておいてくださいね。」と一言添えるだけでOKなのです。カウンセリングの時間を取らなくても、スタッフを教育しなくてもできることです。
しっかり時間をとってカウンセリングするよりは効果が低いですが何もしないのとでは雲泥の差があります。まずはできることからはじめてみましょう。
「チラシ」、「ポスター」、「動画」どれが一番効果があるのか?
さて、このような施策の中で一番効果があるのはどれでしょうか?
結論から言ってしまうと「動画」による情報提供が一番患者さんに伝わりやすいです。
質問です・・・
「新聞を読むのとテレビなどのニュースを見るのとどちらがより簡単に情報を入手することができるでしょう?」
「浅く、広く、簡単に知れる」ということで言えば圧倒的にテレビなどのニュースのほうが理解しやすいですよね。そこから気になって更に詳しく知りたいと思えばより詳細を新聞や、書籍、ネットなどで自ら情報を入手すると思います。
日常生活においても、はじめはあまり興味のないことでもニュースを見て興味を持ち、ネットなどで検索するという機会はきっと多いはずです。
まずは自費治療についての「キッカケ」作りが重要で、動画が一番「キッカケ」作りに適しています。
補綴カウンセリングのタイミングまとめ
今回のタイトルである「補綴カウンセリングのNGなタイミングとNGワード」について言うと、
NGタイミング → 根充後に”いきなり”
NGワード → 金額の話
ということになります。まずは、初診~治療中の要所要所で
- 患者さんの口腔内でどんなことが起きているか
- 補綴物によってどういう違いがあるか
などの情報を提供して、「根充後」に治療についてお話してみてはいかがでしょう。
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